【読書記録】最近読んで面白かった3冊まとめ(26年5月編)~重松清『口笛吹いて』など~

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口笛をふいて/重松清

あらすじ

家庭や職場でいろんな問題を抱えながら、それでも懸命に生きる人々を描いた短編集。

感想

どの話も、決して手放しの希望が持てるような結末ではありません。ある意味では、苦しい状態に向かっていく最中に物語が終わっていくような感覚すらあります。というか、主人公たちが抱える問題に対して、解決しないまま「これからも向き合っていく」というところで幕が閉じるのです。まあ、これは重松清さんの作品全体に共通している特徴でもあるんですけどね。

本作の主人公は、父親が多いです。母親や娘、息子も描かれてはいますが、どの物語でもキーパーソンになるのはやっぱり「父親」として描かれている人物たちです。

そこは重松清らしさでもあるのですが、作中に登場する主人公たちの思いや考えに、深く共感できてしまうのもまた事実です。良くも悪くも、現状を大きく変えるつもりもなければ、変える力もあまりない人たちばかり。だからこそ、決して他人事には思えず、どこか自分に通じる部分があって目を背けることができないのです。

「子供のときは正しかったことが、大人になると正しくなくなる」
そんな大人の勝手な理屈や、矛盾、不条理さに向き合わなければならなくなります。
そして、そんな現実に折り合いをつけつつ、「希望を持てたのか、持てていないのか?」という絶妙なラインで話は終わっていきます。希望に満ち溢れているわけではないけれど、決して絶望でもない。そんな余韻が残るのです。

個人的に一番好きだったのは、表題作にもなっている『口笛をふいて』でした。
重松清さんらしさがぎゅっと詰まったこの作品は、少し疲れてきたお父さんにこそ、おすすめなのかもしれません。

我が家はまだ子どもが小さいですが、いずれ大きくなったとき、私自身も近い将来にまた読み返すときがくるような気がしています…

どんな人におすすめ?

毎日仕事や家庭で懸命に頑張っていて、「最近少し疲れたな」と感じているお父さん世代にこそ、一番におすすめしたいです。また、子育て中の親御さんや、大人社会の理不尽さや矛盾にモヤモヤを抱えている方にも。スカッとするような大逆転劇や分かりやすいハッピーエンドはありませんが、「悩んでいるのは自分だけじゃないんだな」と、そっと寄り添ってくれるような静かな共感が欲しい方にぴったりです!

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 / 岡田尊司

あらすじ

幼少期のきずな(愛着)の傷つきが、大人の「生きづらさ」にどう影響しているのか。そのメカニズムと克服へのステップを解き明かした一冊。

感想

友人やパートナー、職場の人間関係などで「人との距離感がうまく掴めない」と悩む人は少なくありません。近年、こうした大人の生きづらさの背景として注目されているのが「愛着障害」です。

愛着障害とは、幼少期に親などの養育者との間で安心感(愛着)が十分に育まれなかったことで、大人になってからも他者との関係構築に苦労してしまう心の状態を指します。そして、自分自身が親になったとき、その生きづらさを抱えたままだと、我が子へも同じような接し方をしてしまい、子どもへと連鎖してしまう例もあるようです。

しかし、その特性を正しく理解し、適切にケアをすることで、人間関係の悩みは少しずつ解消していくことができます。この本では、愛着障害の基本的な知識から、「不安型」「回避型」といった具体的なタイプ別の特徴、そして日常でできる克服ステップまでが徹底的に解説されています。

平たく言ってしまえば「小さいうちは、子どもをしっかり抱っこして安心させてあげよう」というお話なのですが、歴史的な著名人の具体的なエピソードなども交えながら解説してくれるので、とても腑に落ちやすかったです。

また、非常に興味深かったのが「愛着障害を抱えていたからこそ、普通の人にはないような才能を発揮し、世界を変えたり、優れた作品を生み出したりした著名人もいる」という一面が紹介されていたことです。単なる生きづらさの要因としてだけでなく、それが凄まじい努力や創造力の原動力にもなり得るという背景の解説は、興味深かったです。

自分自身の心の仕組みを知り、より生きやすい未来を迎えるためのガイドとして、ぜひ役立ててほしい一冊です。

どんな人におすすめ?

友人やパートナー、職場の人間関係などで「なぜか人との距離感がうまく掴めない」「いつも人間関係で同じような悩みを抱えてしまう」と感じている方に読んでいただきたい一冊です。また、これから親になる方や現在子育て中の方にとっても、「子どもとの接し方」や「安心感の与え方」を見つめ直す大きなヒントになります。自分や他者の心の仕組みを理解し、毎日の生きづらさを少しでも軽くしたい方にぜひ手に取ってほしいです。

正体 / 染井為人

あらすじ

一家惨殺事件の容疑者として死刑判決を受けた主人公・鏑木(かぶらぎ)が脱獄。姿や名前を変えながら日本各地を転々と逃亡する中で、彼が出会う人々との人間模様を描いた長編サスペンス。

感想

「結局、この主人公の『正体』はなんなのか?」——そんな疑問を胸に、最後の最後まで追いかけるように読んでしまう一冊でした。

この作品の面白さは、殺人犯として追われる主人公が、逃亡先のさまざまな場所でいろんな人と出会い、深く関わり合っていく点にあります。過酷な環境の中で必死に生きる彼の姿を見ていると、「この人は本当に、一家を惨殺するような悪人なのだろうか?」と、読んでいるこちらまで感情を揺さぶられるのです。

関わった登場人物たちの目に映る「主人公(鏑木)」の姿が、それぞれ全く異なっているのも非常に魅力的です。そして、彼と時間を共にした人々は皆一様に、「彼は本当に悪人なんだろうか?」という強い思い(葛藤)を抱くようになります。

もちろん、物語の最後にはしっかりとした結末(オチ)が用意されています。個人的にユニークだと感じたのは、その結末に対して作者自身が見解を表明している点です。他の小説とは少し違う、そんな作りも印象に残りました。

作品としての評価もやはり高いようで、映画化もされています(私は映画化を知ったあとに本作を手に取りました)。個人的に映画化されている小説は予告編などを見て、登場人物のイメージをつけてから読むのがおすすめです笑。

どんな人におすすめ?

単純にエンターテインメントとして面白いですが、サスペンスの中にミステリー要素や濃密な人間ドラマが絡み合う内容です。
この作家さん(染井為人さん)の作品を読むのは初めてでしたが、人間の本質や社会の暗部を切り取った「ヒューマンサスペンス」系のジャンルを得意とされているようなので、そういった「ただ怖いだけじゃない、深く考えさせられるミステリー」が好きな人には特におすすめです!

最後に…

個人的に重松清さんは大好きな作家さんで、今まで何冊も読んでいますが、作品に流れる空気感はどれも共通しています。分かりやすいハッピーエンドではないけれど、なぜか最後に希望が持てる作品が多いので、ぜひおすすめです!また、今回紹介した染井さんの作品もすごく面白かったので、ぜひ他の作品も読んでみようと思いました。以上、最近読んだ本の紹介でした!

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